まず、ご相談いただき、その内容により、
専門的な建築技術の要否が必要な事案であるのかどうかを判断します。
建築技術の判断が必要な場合は、専門家に目視を中心とする「予備調査」をしてもらい、何が問題であるのか、紛争の対象となる大まかな金額(補修等)はいくらであるか、更に詳細な調査が必要かなどを判断してもらいます。
この予備調査の費用は、通常は1回、1名につき5万円(消費税別)+交通費程度ですが、個々の建築士との合意によって決まりますので、必ず、費用をご確認の上、ご依頼ください。
専門家に意見に基づき、建物の問題点を指摘し、補修や損害賠償を求める内容証明郵便を相手方に送付します。そのうえで、現実補修や賠償金の支払いを話し合うことになります。
ご本人で交渉していても埒が明かない場合は、弁護士が代理人として交渉を行い、紛争が解決する場合もあります。
また、ご本人が交渉をされる毎に今後の方針を相談させていただく方法もあります。
ただ、建築紛争においては、長期間交渉をしているケースが多々見受けられます。連絡をすると業者が少しだけ補修したり、状況を確認にくるが、一向に根本的な問題を解決しないまま長く交渉していると、時効の問題があったり、建物の新築性が薄れてきたり、時間が経って言い合いをしているうち被害者と加害者の区別がつきにくくなったり、加害者の反省の感情が薄れたり、また、後日訴訟になった際の裁判官の心証が、「裁判所の救済を求めるのが遅かったのだから、大した問題でなかった」ととられたりするなど、長期に交渉して良いことはありません。話し合いを続けて、膠着状態になったら、他の手続をとるのが賢明であると思われます。
訴訟、あるいは場合によって調停の場合も、その主張を裏付ける証拠として、私的鑑定書を作成する必要があります。
私的鑑定書に必要なものは、次のとおりです。これらの事項が揃って初めて、訴訟や調停に有効な私的鑑定書となりますので、作成段階から、訴訟や交渉を行う弁護士が関与して必要事項が漏れていないかを検討することが望ましいと思います。
なお、予め、建築士さんに鑑定書を作成してもらってから弁護士に相談に来られる場合で、必要事項が欠如していた場合は、書き加えてもらう必要があります。
私的鑑定書には、これらの項目がないものが散見されますが、請求額(損害賠償額)を算定する必要がありますので、これらの項目は私的鑑定書に欠かせません。補修方法を特定したのち、その補修方法のための費用、同期間(仮住まいが必要な場合の損害の算定に必要)の算定が必要となります。
なお、交渉時においても、相手方から具体的な瑕疵(欠陥)が分かるものや、補修方法の見積書を求められる場合が往々にしてありますので、その際は、訴訟よりは簡易なもので構いませんが、上記要求に応じた紛争解決に必要な私的意見書を作成する必要があります。
当事者同士では、専門的知識を有する相手方と対等に話し合うことができないので、中立な第三者に介入してもらって話し合いをすることができます。
これらの機関には、各地の裁判所での調停、総合紛争処理センター、請負契約であれば建築工事紛争審査会、評価住宅(建設住宅性能評価)及び(履行確保法による)保険付き住宅であれば、住宅紛争審査会に申立てをすることができます。
話し合いでは解決しなかった場合、または当初から話し合いでは解決する見込みがない場合は、訴訟を提起することになります。訴訟になったとしても、最終的な解決は判決だけではなく、訴訟の途中で和解という話し合いが、裁判所が間に入って行われる場合もあります。
話し合いや判決、裁判上の和解などにより、紛争が解決されますが、建築紛争における解決内容として、主として3つのものがあります。
判決になれば、金銭賠償として算定された金額等を支払うものとなります。
判決でなくとも、一度、紛争になって信頼関係がなくなった相手方に補修してもらうことは、双方にとって、難しいものがありますので、金銭で賠償してもらい、他の業者に補修してもらう方法が一番良いと思われます。しかし、他の現実には、自分ですると廉価でできる工事が、他の業者に依頼する金額を算定すると他の業者の利益の分まで相手方が賠償しなければなりませんので、相手方が抵抗する場合もありますし、そのような金銭賠償をする資力が相手方にはない場合もあります。
一度相手方との信頼関係が破壊していることもあり、後日、更なる紛争が発生する恐れがあります。
しかし、この方法を選択せざるを得ない場合は、別途に監理者をつけ、監理者に工事内容や工程表などを提出してもらい、事前に工事内容を確定する必要があります。しかも、万一、相手方が約束した工事をしない場合は、どうするかを検討しておく(確実なのは合意書を作成して条項化しておく)必要があります。
相手方は物件を取得して、転売できるので、金銭賠償より受け入れ易い場合もあります。しかし、相手方から受け取る金額で、ローンなどを支払って、転居できるか、再度、新居にローンが組めるかなどが問題となります。